石橋工務店は社員大工を育て、技術の伝承を行っています。
石橋工務店は初代石橋重平が大工として創業したことから始まっており、創業当初から変わらない ‘職人’ としての心構えが脈々と息づいています。日本の木造建築、住文化の中心を担うのは大工職人であるという認識のもと、大工を下請け化するのではなく、自社で抱え育成する道をこれまで歩んできました。
時代が移り変わっても、常にお客様に喜んでいただける家づくりを続けていくために、毎年若手の大工希望者を募り、熟練の職人と共に働きながら次の世代の大工の育成に力を入れております。
現在、木造建築の現場ではコンピューターと機械によるプレカットが主流になっており、弊社でも工期や価格を考慮しプレカット材を主に扱っています。しかし、木造住宅で使用する無垢材は一本一本の性格が違うため、それを見極め、無駄なく適材適所に使用することができる熟練の大工の目と技術が重要だと考えており、物件によっては現在でも大工による「手刻み」を行います。
大工が手作業で木材に墨を付け、ノコギリやカンナで加工していく「手刻み」の工程を、次の世代に伝えていくことも、弊社の使命であると考えております。
社員大工の強みを最大限に生かせるものが寺社仏閣です。貴重な文化遺産とも言える建築物の改修、増築、また時代に合わせた新築などもお任せいただいています。
建築に幅広い視野を ドイツの旅職人を受け入れ
皆さんは、ドイツの旅職人をご存知でしょうか?大工や家具職人が世界を旅しながら技術を学ぶ放浪修行を「ヴァルツ」といい、中世から続く伝統的な制度で、「ヴァンダーゲゼレ」と呼ばれるのが旅職人です。
2019 年 11 月、石橋工務店では、ドイツ北西部のベルゲ出身の、旅職人ジーモン・ポッペさんを受け入れました。ポッペさんは工務店を営む父親の下で働いた後、旅職人としてドイツ国内で修業。さらに外国での修行を希望していたところ、縁あって石橋工務店で働くことになりました。
旅職人には厳しい規則が課せられます。例えば、3 年間と 1 日、実家から半径 50 キロ内に入ることができない。パソコンやスマートフォンなどは持つことができない・・などなど。こうした厳しい規則のもと、建築に必要な技術を身につけていくのです。
職種的に大工は黒い幅広い帽子、襟のない白いシャツに黒のコールテン生地のチョッキとジャケット、ズボンと決められています。一目で一般の人が大工の旅職人と認識できる服装は移動や寝泊りに見ず知らずの人の好意に頼らなければならないためです。自分の生まれ故郷とは文化が違う土地で苦労をしながら技術だけでなく、人間性を高めることを目的とする旅職人の制度が、中世の時代から今も続いていることに驚いてしまいます。
ちなみにチョッキのボタンの8個は8時間働くことを意味し、ジャケットの袖のボタンの6個は週に 6 日働くことを意味しています。
石橋工務店には若い職人も多く、当初は言葉の壁などもあり、戸惑いもありましたが、ポッペさんとの触れ合いは、今までの考え方や感覚を見つめ直す絶好の機会となりました。
ポッペさんの修行の様子は、新聞、TV などでも取り上げられ、大きな反響を呼びました。
独特な衣装に身を包んだ旅職人ジーモン・ポッペさん ( 当時22歳 )
建築現場で働くジーモン・ポッペさん
取材を受けるジーモン・ポッペさん